宝石の国 12巻まで読んだ感想 実は主人公は救われているのではないか説
こちらもメルカリやせどりとは全く関係ない話題です。
宝石の国 考察
宝石の国 12巻まで読んだのですが、もう完結っぽい雰囲気なのに、公式から完結発表はないので、まだ先がどうなるかはわからないんですよね。
ただ、私的には12巻ラストで完結で良いんじゃないかと思いました。なので、そこまで読んだ中での感想と考察です。
以下は重大なネタバレがありますので、ネタバレを踏みたくないかたは、ブラウザバッグしてください。
フォスは究極的には救われているのでは?
宝石の国は、とにかく主人公であるフォスがひたすら報われない上に、12巻ラストでも全く報われていない鬱作品 という評価が多いです。
確かに、フォスの12巻ラストに至るまでの過程、苦しみ、孤独などかなりハードで鬱作品ではあると思います。
ただ、私は12巻ラストでフォスは究極的には救われているんじゃないかと思いました。
以下でそう思う理由を説明します。
ざっくりあらすじを書くのですが
あらすじ
最初に、遥か未来の人類が絶滅した世界という説明があり、そこに宝石の体でできた宝石生命30名ほどと、(宝石生命なのかも謎の)金剛先生というリーダー的存在が力を合わせて暮らしているという話から始まります。
月からやってくる謎の存在(以下月人)が、宝石生命を狙い襲撃してくることがあり、宝石生命は宝石が砕けても繋ぎ治せば復活するので基本的には不死身なのですが、月人の襲撃により砕かれ月に連れ去られるとどのような目に合うのかも分からないので、宝石生命たちは自分たちを守るために日々襲撃に備えてすごし、戦っています。
主人公のフォスフォライト(以外フォス)は脆い宝石の体でできており、頭脳もパッとしないポンコツ宝石生命体。戦闘でも役立たずで強い承認欲求と孤独を抱えながらコンプレックスを抱いて過ごしています。
と、まあそんなところなのですが、以降フォスは砕けた宝石の体を補うために他の強い素材を繋ぎ合わせたりして、だんだん強くなっていきます。(強くなっていくというとよいことのようですが、だんだん化物じみた姿に近づいていきます。)
以下のネタバレは省略します。(あまり詳しく書きすぎるといろいろマズイと思うのです)
気になる方は漫画を購入してお楽しみください。
金剛に祈ってもらい無になる願いが果たせない月人たちは、実は次の手を考えていました。
それは、フォスに新たな神になってもらい祈ってもらうことでした。
月人たちの望みにより、次の神に選ばれてしまったフォスはただ一人地上に残され、1万年もの間孤独にさせられてしまうことになりました。神になるための期間として1万年の年月が必要だったのです。
その間(月人たちは不死身なので)月人、他の宝石生命に加え、砕かれた宝石たちも新たな技術で復活し、人間の肉からできたアドミラビリス属も月人となりました。
宝石生命も月人となりました。これは、エクメアたちが無になった時、残されてしまうのを恐れたカンゴームが開発した技術によるものでした。
そうして、フォス以外のものたちは1万年の期間を満喫して過ごすのです。
この辺が、フォスに苦しみを押し付けて他のものたちは楽しく過ごすなんて胸糞話だと言われる大きなポイントではあります。
そんな中、フォスは金剛を作った博士の夢を見ていました。(夢の内容はフォスが救われている説にとって重要なポイントなので後述します。)
そして、その夢から覚めたフォスは完全に神の姿になり、すべての月人を無にするために祈るのです。月人たちも消えたくないなどとは言わず、フォスと一緒に祈りはじめます。
と、ここで終わりです。
ざっくり書くと、フォスは
- シンシャやカンゴームとは結局仲間になれずずっと孤独
- 散々苦しい目にあった上に他の宝石生命たちが1万年満喫している時に孤独に苦しんでいる
- 散々利用しつくされた上に、ラストでも月人の望みを叶えるために祈っている
と、この辺が、鬱、胸糞と言われるポイントかなと思います。
真に救われているのはフォス説
しかし、私はラスト直前の博士との会話などから、真に救われているのはフォスの方ではないかと解釈しました。
博士は人間なのですが、「次は人間の世界ではない、もっと合理的な生物、無機物の世界が来る」と予言します。
そして、作られたばかりの金剛に「そのための橋渡しをして欲しい。それは人間のためではない」と言います。
フォスが神として目覚める世界にはもう人間はいませんが、絶滅した人間からできた月人、宝石生命、アドミラビリス属は広義では人間に含まれていると思います。(無機物ではないですし)
そして、その橋渡しというのはそれらの生物を祈りによって完全に無にすることだと思います。
それは月人自らが望んだことなのですが、博士が言うことを考えると、暗にそれは、別に月人のためではなく次の世界のためだということです。
そして、博士は「脆い宝石になる夢を見た」と、言います。完全にフォスのことですね。
宝石の国の世界には単純な生まれ変わりはないようなので、博士がそのままフォスに生まれ変わったというわけではないと思います(頭脳的にも違いすぎます)。しかし、フォスが博士の意思を継いだとは解釈できます。
そして最後に博士が「渡ったら橋は燃やしてしまってね。」と、言います。その時の博士は何だか怖い顔をしています。
これは、月人たちを望み通り無にしてしまい、もう彼らに後戻りは出来ない。橋渡しをしたフォスだけは新しい合理的な世界に行ける…ということだと思います。
それを聞いたフォスは1万年の眠りから醒めて、先述した通り月人のため(という風に見える)に祈り始めるのです。
ここで散々利用してきた月人たちに(わかりやすい)復讐をしろという意見も良く見ます。
実際にその時のフォスには復讐する力もあるのです。しかし、月人の望んだ通り祈り始めます。
恐らくその時には、もうフォスは月人たちにわかりやすい復讐をすることにはもはや興味もないんだと思います。
「とっとと無にして、新しい世界に行こう」という思いしかないんじゃないかと思います。
ここで話が終わっているので、次にどうなるかはわからないのですが、フォスだけ新しい世界に行けるならば、人を祖にした者たちの醜い争いなどとは無縁なもっと素晴らしい生命たちの世界に行けるのかもしれません。
もしくは、もう自我を持った生命体が生まれない可能性もありますが、博士の話を聞いたフォスはもう孤独とは無縁の精神状態なので寂しくはないんじゃないかと思います。
なので、
フォスだけ新しい世界に行ける→最も救われている。
と私は考えます。
この物語、フォス以外のものは全員フォスを犠牲にして月人生活を送っており、皆ひどいんですけど、かと言って極端な悪もいないんですよね。
エクメアもフォスに対してはひどい仕打ちをしたよなとは思いますが、エクメアは月人に対してはとても献身的であり、成仏しそびれた月人たちのために奮闘したと思います。
宝石生命たちも綺麗な心を持っているという割には皆、性能にコンプレックスを抱えて居たりドロドロした面があります。
これはやはり、月人も宝石生命も皆、人を祖とした不合理な生物であるからなのだと思います。
こう考えると、月人たちのフォスが目覚めるまでの1万年の幸せも儚く愛おしいような気がします。